第20章 中野社長、当事者になると見えなくなるものだな

電話口で、中野航平は言葉を失った。

ここ数年、彼は仕事に追われっぱなしで、子どものことはほとんど長谷川栞が見てきた。

一方の中野蓮はまだまだ遊びたい盛りで、そういうときは決まって中尾美希が連れ出していた。

航平は何度も目にしている。

栞の前では涙目でしょんぼりしている蓮が、中尾美希の顔を見た途端、ぱっと花が咲いたように笑うのを。

『ほかに用がないなら、もう電話してこないで。中野航平、これから私があなたと話すのは離婚のことだけ!』

ぶつり。

通話は一方的に切られた。

中野家。

またしても切られたスマホを握ったまま、航平は何を考えているのか、じっと画面を見つめて動かなかった。

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